【本の感想】「笹の舟で海をわたる」 – 人生はただ”在る”もの。そのうえでどう生きるか

投稿日:2018年11月27日
最終更新日:2021年3月14日

評価: 5点/10点満点 ★★★★★☆☆☆☆☆

※結末についてはっきりとしたネタバレはありませんが、作中のいくつかのシーンに触れています

概要/あらすじ

朝鮮特需に沸く1950年代の日本で、坂井左織は矢島風美子に出会う。風美子は疎開先でいじめられていた自分を左織が救ってくれたと話すが、左織は思い出せない。その後、左織は大学教師の春日温彦に嫁ぎ、風美子は温彦の弟潤司と結婚し、二人は義理の姉妹となる。最初こそ風美子との交友を楽しんでいた左織だが、不気味なほど自分に接近してくる風美子に疑問の念を抱き始める……。

 

レビュー

二人の女性の対照的な人生が印象的

結婚、出産、そして夫との死別を経験したひとりの女性の人生を描き出した作品。エキセントリックで華やかに活躍する風美子とのコントラストが印象的で、各登場人物の個性が強烈な小説。娘の桃子を憎む自分を戒め、葛藤する左織の描写は男性には書けないだろうなぁと思ったし、自分には無い視点だったので感心した。誰もが思う可能性はあるけど人には言えないような感情に切り込み、丁寧に描いていることには感服した。

 

メッセージがイマイチつかめず

ただ、正直私はこの小説にどういうメッセージが込められているかわからなかった。そもそも序盤から、ストーリーがどういう視点から出発しているからイマイチつかめなかったので、終盤まで掴みどころが無いような気持ちを覚えたまま読み終えてしまった。

人生は笹船のように不安定でコントロールすることはできず、ただそこに「在る」ものだけど、しっかり自分の意志で漕ぎ出していこう、というメッセージを左織の意識の変化を通して伝えたかったのかな~と勝手に解釈した。左織と同じ経験をした壮年の女性なら、共感できる部分が大きいのかもしれない。


投稿者: wakky

映画と旅行が大好きなエンジニア。お酒、ゲーム、読書も好き。

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