評価: 8点/10点満点 ★★★★★★★★☆☆
概要/あらすじ
「実世界では使えない教養」と思われがちの哲学だが、ビジネスにも重要な示唆も多い。この本では、ビジネスマン向けに「哲学の使い方」をまとめている。
感想
哲学をビジネスで使うというコンセプトの面白さ
哲学をビジネスで使おう、というコンセプトが面白く、つい手に取ってしまった一冊。アメリカやヨーロッパのエリート教育機関では哲学教育が積極的に行われているという話は興味深かったし、「無教養な専門家は文明にとって最大の脅威」であるという話は、大手企業で不祥事が続いている最近の状況を指し示しているようで、説得力があった。
内容としては、有名な哲学者の考え方を易しく説明しつつ、ビジネスや普段の生活にこういう風に使ってみてはどうですか?と提案をしている。一部の解釈は著者の感覚に寄っている印象も受けたが、解説はわかりやすく、自分の日々の生活や仕事にどういう風に活かせば良いかのイメージもつきやすい。そもそも私は哲学に関する本はほとんど読んだことが無かったが、この本の内容はすんなり理解できた。
偉大な哲学者たちの言葉が胸を打つ
印象的だったのは、一番最初に紹介されているアリストテレスの「ロゴス・エトス・パトス」の話で、人を動かすには論理(ロゴス)、倫理(エトス)、情熱(パトス)の3つが必要だという内容。私のようなガチガチの理系出身者は、どうしても論理第一で物事をとらえがちだが、人を動かすにはそれだけじゃダメだ、という発想は新鮮だったし、これからの人付き合いでも少し意識してみたいと思った。
また、エーリッヒ・フロムの話に絡めて「自由とは、耐え難い孤独と痛烈な責任を伴うもの」だという内容も衝撃だった。というのも、私もこれまでの人生で似たようなことをモヤモヤ感じていたのだが、それを適切な言葉でズバッと言われた気がして、今まで感じていたモヤモヤがひとつ晴れたような気がする。
「武器になる」というよりは、「武器のつくりかた」?
一点だけ気になったのは、「武器になる哲学」というタイトル。武器になる、というほど即時に使えるような内容は紹介されていない気がして、哲学をどういう風に武器にしていくか、いわば「武器のつくり方」の手ほどきをしてくれる本かなと思う。
即座に色々な問題を解決してくれるわけではないが、これからの生活や仕事を豊かにするアイディアの宝庫のような本なので、生き方に悩んでいる人は、読んでみると突破口が見つかるかも。