【本の感想】「量子論」を楽しむ本 ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる! – シュレーディンガーの猫や多世界解釈…わけわからんけど面白い量子論の世界

投稿日:2019年8月1日
最終更新日:2021年3月14日

評価: 8点/10点満点 ★★★★★★★★☆☆

概要/あらすじ

素粒子から宇宙まで、あらゆるものを解明する鍵として注目されている量子論。一方で、難解で常識的には理解しづらく、苦手意識を持っている人も多いのではないだろうか。

この本は、東京大学の佐藤勝彦教授が監修を担当し、量子論のポイントを図やイラストを多数使って、初心者向けにわかりやすく解説している。

 

レビュー

わたしの量子論のイメージは「面白いけど、わけわからん」

高校生のときにブルーバックスシリーズで量子論の本を読んだとき、その不可思議な世界に魅了されたことを覚えている。

その後、大学の講義で量子力学をとったとき、内容についていけず、単位のためにひたらすら公式を覚えた記憶がある。そのため、私の量子論に対する印象は「不思議で面白いけど、わけがわからない」というものだった。

そんななか、Kindleでこの本を見つけて高校生の頃の気持ちを思い出し、ダウンロードして読んでみた。

 

わかりやすくも厳密性を捨てていない

量子論の生みの親の一人であるボーアと、量子論に反対していたアインシュタイン、そしてシュレーディンガーの猫がモデレーターをつとめての対話形式という、不思議なイントロダクションから話がスタートするのが印象的。

最初に難しい話から始めて、読者がいきなりつまずかないように…という努力が感じられるし、実際読んでいて楽しかった。

内容もやさしく書いてあるし、図も多くてわかりやすいが、やはり一部理解が難しい部分はある。個人的にはエネルギー量子仮説の説明のところが難しかった。

ただ、重要なポイントだけ赤字で書いたり、全てを理解しなくても読み進められるように「ここは読み飛ばしていい」とか「ここだけは覚えておいてほしい」と明記してあるので、厳密性を保ちつつ、最後まで読者が楽しんで読めるようにする工夫が感じられた。

 

当時の論争や多世界解釈。読みものとしても面白い

波動関数の確率解釈がなぜ論争を読んだかなど、当時の状況がわかりやすく書いてあるし、有名なシュレーディンガーの猫の話も読み物としても非常に面白い。

特に世界があらゆる可能性に枝分かれして存在しているという多世界解釈については、数々の小説やマンガなどでモチーフにされているだけあって面白い。とてもSFチックな話だが、多世界解釈だと論理的な破綻が無くなるという話も興味深い。物理好きでなくても楽しめると思う。

 

まったく量子論を知らなくても楽しめるかどうかは不明。でも…

個人的には満足だったのだが、私は一応むかし量子力学の講義を取っていたこともあり、全く量子論の触れたことがない人が読んで楽しめるかどうかはわからない。

ただ、「昔勉強したけどよくわからなかった」という人が読めば「そういうことだったのか」と納得できる内容にはなっていると思う。

最後に、本書に出てくるボーアとファインマンの言葉を引用したいと思う。

「量子論によってショックを受けない人は、量子論をわかっていない人だ」 – ボーア

「量子論を利用できる人はたくさんいるが、量子論を理解している人は1人もいないだろう」 – ファインマン

物理学の2人の巨人でもこういっているのだから、量子論を完全に理解するということは不可能に近いのかもしれない。

ただ、半導体や物性分野でも利用されており、量子コンピュータなどでますます存在感が増している量子論は、概要だけでも知っておいて損はない。

この本を読んで「難しいけど面白い」とポジティブに思えたなら、それだけでも読んだ価値は十分すぎるほどあるのではないだろうか。

 


投稿者: wakky

映画と旅行が大好きなエンジニア。お酒、ゲーム、読書も好き。

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