【本の感想】「怒り」- 犯人未逮捕の残忍な殺人事件のあとに現れた3人の男

投稿日:2020年7月28日
最終更新日:2020年9月26日

評価: 7点/10点満点 ★★★★★★★☆☆☆

怒り(上) (中公文庫)

概要/あらすじ

若い夫婦が自宅で惨殺され、現場には「怒」という血文字が残されていた。犯人は山神一也、二十七歳と判明するが、その行方は杳として知れず捜査は難航していた。そして事件から一年後の夏――。千葉の港町で働く槙洋平・愛子親子、東京の大手企業に勤めるゲイの藤田優馬、沖縄の離島で母と暮らす小宮山泉の前に、身元不詳の三人の男が現れた。(Amazon紹介文より)

 

レビュー

突然現れた3人の男を巡る3つの物語

房総の港町で働く親子、東京の大企業に勤めるゲイの青年、沖縄の離島で母と暮らす少女の前に、身元不詳の3人の男が現れて、それぞれのストーリーが並行して進んでいく。

どの登場人物もそれぞれ悩みや闇を抱えており、心理描写も繊細なので自然と感情移入できる。そのぶん、登場人物たちの苦難に同感して暗い気持ちになる部分もある。特に沖縄の少女のエピソードはかなりエグいので、読んでいて少しつらくなった。

 

山神一也は誰なのか…先が読めないストーリー展開

逃亡した山神一也と3人の男たちの共通点が浮かんでくるたび「誰が山神なのか?みんな同一人物なのか?それとも…」という疑問が浮かんできて、どんどん先に読み進んでしまう魅力がある。

ひとつ謎が解けるたびにまた新たな謎が出てきて、この小説の世界に沈み込んでいくような気持ちになった。

もちろん結末はここでは書かないが、読み終わったときにスッキリするかどうかは人によって違いそう。私は結末を読んで少しモヤモヤとしたものの、一方で一部の登場人物たちの顛末には爽やかさも感じて、なんとも複雑な心境になった。

 

人間の心理描写とミステリー描写のバランスの良さ

全体を通して、人間の心情を描く文学的な面と犯人を巡るミステリーの面がバランスよく織り交ぜられた、深みのある小説だと思う。

文庫版だと上下巻に分かれているのでボリュームがあるが、純粋にエンターテインメントとしても面白い小説。謎解きにスポットを当てた軽快なミステリーが好きな人には合わないかもしれないが、心理描写に重きを置いた重厚なミステリーが読みたい人にオススメ。

2+

投稿者: wakky

映画と旅行が大好きなエンジニア。お酒、ゲーム、読書も好き。

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