評価: 9点/10点満点 ★★★★★★★★★☆
※結末についてはっきりとしたネタバレはありませんが、作中のいくつかのシーンに触れています
レビュー
「巨人たちの星」シリーズの3作目
冥王星の彼方の星から異星人の通信が届くが、相手は地球人の言葉のみならず、データ伝送コードを知りつくしている。その星に地球人と接触した異星人はいない。つまり、この地球は遥か昔から監視されていた…!?というお話。
読むのにかなり時間がかかってしまったが、これまでの作品からのストーリーがひとつに繋がる。感想を書く前に結論から言うとこれまでの2作と比較しても引けを取らない面白さで、間違いなくSF小説の傑作だと思う。ちなみに前2作のレビューは以下も書いてます。
「星を継ぐもの」- 月面で見つかった5万年前の不可解な遺体の正体は…
「ガニメデの優しい巨人」- 木星の衛星で発見された驚異の宇宙船の調査中、宇宙の一角から接近する物体が…
異星人と遭遇後の社会や政治をリアルに描く
1 作目は月面で見つかった謎の人間の遺体を巡った壮大なミステリー、そして2作目では巨人との遭遇から人類の隠された秘密の解明が主軸になっていた印象だが、3作目となる本作は、訳者後書きにもあるように異星人と関わっていく中での政治や外交、技術格差なども深堀して描かれている。こういった観点から異星人との交流を描いた話を私は読んだことがなかったので、新鮮な気持ちで読むことができた。
こう書くと小難しい話のように見えるけど(実際、科学的な細かい描写は小難しいが)、手に汗握るスパイ小説のようなシーンや、壮大なSFアクション映画のようなシーン、はるか昔から地球を監視していた何者かの謎を巡るストーリーなど、娯楽小説としても魅力的な要素にあふれている。
中盤からの加速感と衝撃の真実
このシリーズでは毎回のことだが、緻密で詳細な描写や説明のおかげでストーリーの説得力が増しているのは良いのだが、説明的な内容も多く、序盤~中盤はあまり話のテンポが良くない。
序盤でも盛り上がる場面はあるのだが、しばらく読み進めていると段々飽きてしまい「いったん読むのやめようかな」と思い始めた矢先、中盤で衝撃的な秘密がわかり、いつものことながら脳内で「な、なんだってー!」と叫んでしまった。そこからは夢中で一気に最後まで読み進めて読了。
中盤〜終盤にかけて明かされる衝撃の真実がこのシリーズの醍醐味とも言えるが、人によっては途中で投げ出してしまうかも。個人的には前2作が楽しめた人なら必ず楽しめる内容だと思うので、ぜひ最後まで読んでほしい。個人的には2作目の「ガニメデの優しい巨人」より話に盛り上がりがあって好きだった。
一応このシリーズは3作目で区切りはつくが、この「巨人たちの星」から14年という歳月を経て「内なる宇宙」という続編も出ている。3部まで読んだらいったん終わりにしようと思ってたのだが、ラストの展開には謎も多かったので続きが気になるところ。ということでストーリーを忘れないうちに続編も買って、少しずつ読み進めていきたい。