評価: 9点/10点満点 ★★★★★★★★★☆
※結末についてはっきりとしたネタバレはありませんが、作中のいくつかのシーンに触れています
レビュー
名作サイバーパンク映画「ブレードランナー」の原作ではあるが
第三次世界大戦後の退廃した未来の地球を舞台に、バウンティハンター(賞金稼ぎ)であるリック・デッカードと、火星から地球に逃亡し人間になりすました8体のアンドロイドとの死闘を描いたSF小説。
このブログでも紹介したことがある名作SF映画「ブレードランナー」の原作となった小説だが、大筋の世界観以外はストーリー展開もことなるので、別物と考えた方が良い。ただ、私のように映画で存在を知って読んだ人間でも十分楽しめるSF小説だった。
突飛な世界観や聞きなれない単語に戸惑うも、緊張感ある展開にのめり込む
生きている動物を飼うことがステータスになることや、共感(エンパシー)ボックスで教祖と融合するマーサー教など、かなり独特な世界観の舞台でストーリーが展開される。そのため聞きなれない単語や意味がわからない描写もあって最初は戸惑うが、読み進めてだんだんと世界観がつかめてきたころにアンドロイドとの戦いが展開される。
精工につくられ、専用の検査をしないと人間と判別がつかないアンドロイドとの戦いは騙し合いや不意打ちの連続。非常に緊迫感がある展開がテンポよく進むので、どんどんストーリーにのめり込んでいく魅力がある。
途中で「どういうことなんだ?」と頭が混乱しそうな展開もあるが、主人公のデッカードが読者と同じように混乱し、それに対する答えがしっかり与えられるので、置いてけぼりもくらわずに最後まで楽しく読むことができた。
やや読みにくさもあるが、それを差し引いても面白い
ただでさえ世界観が独特なうえに、私が読んだ浅倉久志氏の日本語訳版もかなり昔に翻訳されたものなので、少し日本語として不自然だったり、意味が取りにくかったりする部分もある。ただ、個人的にはストレスを感じるほどではなかったし、意味がわからなくなるような部分は特になかった。
単純にサスペンス的な面白さもあるのだが、人間と同じように生きたいともがくアンドロイドとの戦いのなかで、自分のやっていることに疑問を抱き、苦悩するデッカードの心情も描かれており、ストーリーにも深みがある。
序盤から中盤にかけてどんどん面白くなっていく本だと思うので、もし序盤で「ちょっとよくわからないな」と思っても、せめてアンドロイドとの対決が始まるあたりまで読んでから、合うか合わないか判断するのがオススメ。
ロボットやAIもののSFが好きな人ならきっと楽しめるはず。