【本の感想】『「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義 日本縮約版 』- 様々な視点から「死」を考えつくす

投稿日:2020年1月21日
最終更新日:2021年3月14日

評価: 8点/10点満点 ★★★★★★★★☆☆

概要/あらすじ

イェール大学で23年続く「死」の講義を担当する哲学者の筆者がまとめた講義内容を日本語訳した本。死とは何か、人は死ぬとどうなるのか、死が教えてくれる人生の価値とは。

 

レビュー

「死」について様々な観点から深堀していく

私は、近しい人や有名人が亡くなったときなどに、ぼんやりと「死ってなんだろう」と考えることがちょくちょくある。そのため、この本のタイトルを見たとき、ついつい気になって本を手に取った。

この本では、イェール大学で「死」の講義を担当する著者が、様々な観点から「死」について考え、深堀していく。自己啓発本などでありがちな「死をポジティブにとらえて人生をより良くしよう」「一日一日を大切に生きよう」みたいな安直な話ではなく、死に関する論理を客観的に展開していき、理にかなった「死」の捉え方を模索していくという本。

「死はいつ訪れるのか?身体が死んだときか、脳が死んだときか」「誰もが死ぬときは独り、というのは本当か?」「死はなぜ悪いのか?そもそも本当に悪いといえるか?」など、興味深い内容の章に沿って論理の展開が進んでいく。

内容的に小難しい部分もあるが、特に論理が飛躍している部分とか納得感が無い部分は少ないように感じたので、スムーズに読み進めることができた。章によっては明確に結論を出さない部分もあるが、幅広い観点から「死」について考えるという経験ができたのは純粋に面白かった。

 

前半部分の省略については賛否両論

実はこの本、Amazonのレビューを見ると少し荒れている。色々と理由はあるが、その主な理由としては、原著の前半部分を占めている形而上学の説明が割愛されている。このことについては本文中で言及されているのだが、納得のいかない人たちがレビューで省略してることを問題点として指摘している。

私は哲学については素人だし読みものとしてこの本を読んでいるので、その点についてはどっちでも良いかな(笑) ただ、日本語訳されている後半部分は、前半の形而上学を踏まえて話が展開されている。そのため、ややわかりにくくなっている面はたしかにあるかも。

一方で、この本は原著の前半を省略してもなお400ページ弱と、それなりの分量がある。私のように読みものとして本を手に取った人にとっては、これ以上のページ数を読むのは少しつらい…。前半部分の和訳も出版社のWebサイトで公開されているので、後半を読んだうえでさらに興味がわいたなら、前半を読むのが良いかも。

 

自分自身の死生観を深めるほかにも子供の教育にも

この本を読んで自分自身の「死」への考えを深めるのももちろん良いが、個人的には小さい子供の子育てをするお父さんお母さんにもオススメしたい本だと感じる。

というのも、私はもし自分が親になったときに「なんで人を殺しちゃいけないの?」「なんだ自殺しちゃいけないの?」などの死に関わるありがちな質問をされた場合、うまく説明する自信が無いな~とぼんやり思っていた。

ただ、この本を読んだことで、何を説明すれば良いのか自分のなかでアイディアは浮かんだし、「とにかくダメなの!」とはぐらかすより納得のいく回答ができそうな手ごたえを感じた。

純粋に「死」という現象に興味がある人にはもちろん、自分や周囲の人の「死」について漠然な不安がある人にもぜひオススメしたい。死の正体が見えてくれば、いくらか不安も和らぐのではないだろうか。

 

補足:前半の形而上学部分が追加された完全版もあり

今回私が読んだのは前半の形而上学部分が省略された短縮版だが、完全版も出版されている。

「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義 完全翻訳版

完全版は751ページもあるので読み切るにはある程度の覚悟が必要になりそうだが、「死について真剣に考えたい」という人は完全版を読む方が良いかも。


投稿者: wakky

映画と旅行が大好きなエンジニア。お酒、ゲーム、読書も好き。

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