【本の感想】「ゼロから始める多目的設計最適化 0 多目的設計最適化とは?」 – やさしく学べる最近の最適化事情

投稿日:2018年12月19日
最終更新日:2021年3月14日

評価: 6点/10点満点 ★★★★★★☆☆☆☆

概要/あらすじ

近年注目を集めている「多目的設計最適化」について、JAXAの研究者である著者が平易に説明した解説書。

 

レビュー

「ゼロから始める」という言葉に偽りなし

そもそも「多目的設計最適化」という言葉自体知らなかったが、Kindle Unlimitedで配信されていたので読んでみた。ざっくりいうと、複数の目的関数がある設計問題における最適化のこと。「ゼロから始める」という名前の通り、初学者でも多目的設計最適化がどんなものか、大雑把なイメージをつかむことができる内容になっている。ただし最低限の知識として、理系の大学を出ているくらいのレベルは必要かも。私自身は昔、強化学習などをやってる研究室にいたこともあり、最適化の概念や、基本的な最適化手法については知っていたので、本書の内容も理解することはできた。

 

自分の仕事に使えるかも? という視点を与えてくれる

内容としては面白かったが、私の仕事(映像制作機器の設計)に使えそうかというと、ちょっと微妙かも。航空系や自動車系で「強度を高めつつ、軽くしたい」みたいに数値で測りやすい指標だと、目的関数を設定しやすいから有用な気はする。しかし映像制作機器となると、数値で表せるものより、クリエイターやプロダクションの「感覚」という数値化しにくいものにフィットするようにつくることが多く、ちょっと問題設定が難しそう。感覚を官能試験とかで無理矢理数値化すれば使えるかもしれないけど、お客さんを巻き込んでやるのはなかなか難しいよなぁ。書いてて思いついたけど、レンズ設計とかには使えそう……というより、もしかしたらもう使っているのかも。

色々ゴチャゴチャと書いたが、上記のように「自分の仕事に使えるかな? こういう部分だったら使えるかも」という着想を得ることができたのは自分にとって収穫だった。こちらの本はかなり初歩的な入門書のようなので、気が向いたらもう少し深堀して勉強してみよう。

 


投稿者: wakky

映画と旅行が大好きなエンジニア。お酒、ゲーム、読書も好き。

【本の感想】「ゼロから始める多目的設計最適化 0 多目的設計最適化とは?」 – やさしく学べる最近の最適化事情」に2件のコメントがあります

    大山聖

    (2019年1月15日 - 10:09 PM)

    著者です.書評ありがとうございます.読者の方に「多目的設計最適化」ってなんだろうということを知ってもらうこと,”「自分の仕事に使えるかな?こういう部分だったら使えるかも」”ということを考えていただくことがこの巻の目的だったので,本の内容を正しく理解していただいたなと大変驚きました.
    おっしゃるとおり,数値で測りにくい指標の問題には適用することは難しいです.ただ,今はそこの研究も進んでいて,たとえば,画像からエッジ抽出をしてそのデータを元にかっこよさを数値化しようとかいう動きがあるので,将来的には映像系にも普及してくると思います(レンズ設計にはすでに使われていますよ!).
    続きの本も出版していますのでまたチャンスがあればご覧ください.
    https://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A7%E5%B1%B1%E8%81%96/e/B07L3371VL/ref=sr_tc_2_0?qid=1547556625&sr=8-2-ent

      wakky

      (2019年1月19日 - 9:16 AM)

      コメントありがとうございます。まさか著者の方に記事を読んで頂けるとは思わず、好き勝手書いてしまって恐縮です。私のような素人でも大変わかりやすく、楽しく読むことができました。
      クリエイターの感覚をどうやって設計に落とし込むかということが、いつも悩みの種になっていますので、かっこよさの数値化というお話は大変興味深いです。続きもぜひ読ませて頂きたいと思います。

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