評価: 7点/10点満点 ★★★★★★★☆☆☆
概要/あらすじ
社長になろうと思って社長になった人はいても、リーダーになろうと思ってリーダーになった人はいない。リーダーシップは誰からか教わるものではなく、自分の生き方の中に発見するものだ。この考え方に基づき、リーダーシップとは何か、二人の著者が語りつくす。
レビュー
リーダーは「なりたくてなるもの」ではなく「結果としてなるもの」
この本のエッセンスは、本当のリーダーというのは、なりたくてなるのではなく、結果としてなるものである、ということだと思う。この本の序盤で紹介されている「桃太郎はいつリーダーになったか?」という例は、そのことをうまく表していると思う。
この本では、具体的なリーダーシップの方法論というよりは、リーダーとはどんなもので、どのような過程で生まれるものかを冷静に分析している。そのため、「良いリーダーになるにはこうしよう」という道筋を示してくれるものではなく、本の内容を考えて、自分でリーダーシップについて色々考える本かなと。
例えば以下の分析は、今後自分が真のリーダーシップを発揮するために必要になることかなと思うので、心にとどめておきたい。
- リーダーの影響力が行使されるには、フォロワーが「喜んでついてくる」ことが不可欠の条件となる。
- リーダーシップを期待される職務に就くと、「権限を手にしている」ことを「リーダーシップを発揮している」という勘違いに陥りやすい。
「自分探し」や「信用」などについての鋭い考察も
以下の文章は、私の常日ごろからの「自分探し」という言葉の使われ方に感じていた違和感を、ズバリ言語化されたようで印象的だった。
したがって、「自分探し」が悪いとまで断言するつもりはない。そうしたいという気持ちはよく理解できる。けれども、自分の軸を見失ったまま、迷路をさまよい続けても、所詮、本当の自分は見えてこない感じがする。大切なことは、そこに踏みとどまり、現実と向き合い、目の前のハードルを一つ一つ飛び越える作業ではないだろうか。
私も、新しい自分を発見するための旅や試みを否定するつもりは無いが、ときおり耳障りの良い現実逃避の口実として使われているような気がするので、自分も現実から逃げないよう、自戒のためにも覚えておきたい。
また、「信用はいわば積立貯金のようなもの」という話も印象的だった。こういう考え方自体はは他の本でも読んだことがあるが、「信用貯蓄の上に安住してイノベーションを起こそうとしないと、フォロワーの失望に繋がる」といった考え方は初めて聞いたので印象的だった。ただ、少しイメージが沸きづらかったので、具体例があるとわかりやすかったかも。
必要なのは知識やスキルの詰め込みじゃなく「内省」
アクティブ・ノンアクション(不毛な忙しさ)や「人生が短いのではなく、その多くを浪費しているのだ」という内容は機知にとんでいて面白く、定期的な内省が必要という内容は納得感がある。
特に、著者がINSEADに勤務していた時に同僚が語った、
忙しい現代人に必要なのは、知識やスキルの詰め込みのためのブート・キャンプ(軍事教練所)では決してなく、自分を内省するという経験だ
という話は心に残った。私も定期的に自分をしっかり内省し、現実を見つめて自分の生き方や、やりたいことを実現する自分に近づけるような努力をしていきたい。
※ちなみに、この本の二人の著者が交互に書いていくスタイルは、一冊で二つの本を読んでいるようなお得感はあるものの、やや話の流が悪くて分かりにくく感じたこともあったかも。