評価: 9点/10点満点 ★★★★★★★★★☆
※結末についてはっきりとしたネタバレはありませんが、作中のいくつかのシーンに触れています
レビュー
月で発見された宇宙服を着た死体を巡るハードSFの傑作
月面で発見された宇宙服を着た人間らしき遺体。現代文明には無い技術を身にまとったその遺体は、人類が高度な技術を持つ遥か昔、5万年前のものだと発覚する。この遺体は一体何者でどこから来たのか?
…という内容を、緻密な科学的描写で学者たちが追及していくという小説。ハードSFというジャンルはあまり知らなかったが、Wikipediaによると天文学・物理学・化学・数学・工学技術などの正確で論理的で厳密な描写を使ったSF小説のジャンルらしい。
この「星を継ぐもの」はハードSFの代表作の一つとも言われるほど有名な作品ということで興味を持って読んでみたが、有名になるのも頷ける面白さだった。
とにかく真相が気になるロマンあふれるストーリー
人間がやっと宇宙に本格的に進出し、月旅行が海外旅行程度の気軽さで行けるようになった未来の世界観。その中で月面で発見された深紅の宇宙服を着た人間らしき遺体が、5万年前のものだとわかる。
このストーリーラインだけでもすでに興奮ものだけど、学者たちの調査が進むにつれて次々と発見される謎が謎をよび、ストーリーにのめり込んでしまう。最近あまり小説を読んでなかったが、久々に集中して一気に読み進めてしまった。
天文や物理に興味がないと少しつらいかもしれないが
Amazonや楽天のレビューを見ると「後半は面白いけど前半が長い」という内容が多かったが、読んでみるとそういった感想が出てくるのもわかる。天文、物理、生物学的に詳細な解析を進めていく様を細かく描写しているので、これらの内容に興味が薄いと呼んでいてつらくなるかもしれない。私は結構そういう話は好きなのでそこまでつらくは無かったが、確かに「ここまで細かく書く必要あるか…?」と思った部分もあった。
ただ、学者たちがさまざまな説をぶつけ合って真相に迫っていく様はリアルで、私のように細かい設定まで気になるタイプの人間でも納得感があった。また、作中の学者たちと一緒に頭を使ってウンウン唸りながら読み進めたうえで、最後に謎が一気に解き明かされる流れはとても興奮で快感さえ覚えるし、説明も筋が通っていて違和感がない。
とにかくスケールが大きくて、間違いなく傑作と言えるSF小説。作中で解き明かされない謎も続編の「ガニメデの優しい巨人」で描かれるということで、こちらも読んだらレビューを投稿したい。