満足度: 8点/10点満点 ★★★★★★★★☆☆
概要/あらすじ
進化生物学者で医学部教授でもあるジャレド・ダイヤモンド氏の本。アメリカ大陸の先住民は、なぜヨーロッパの住民に征服されたのか。その逆が起こらなかったのはなぜか。
公には語られないものの、欧米で一般的に考えられていた「人種による優劣の存在」を真っ向から否定し、進化生物学、生物物理学、文化人類学、言語学などの知見を横断的につかって、各大陸の人種を取り巻いてきた環境を徹底的に考察するアプローチをとっている。
上巻では、主に征服する側とされる側の違いを考察する「勝者と敗者をめぐる謎」と、狩猟採集と農耕の違いにせまる「食料生産にまつわる謎」、そして表題にもある「銃・病原菌・鉄の謎」のうち、病原菌に関する歴史を考察している。
感想
内容的には結構固いというか学術的な本だけど、具体的なエピソードや素人にもわかりやすい解説のおかげで、読みやすい文章になっている。「人種による優劣を否定した」と言ってしまえば簡単だけど、かなり綿密な調査や考察が行われていて、覚悟を持ってこの本を執筆したんだろうなぁと感じた。
印象的だったのは、インカ帝国がスペイン人に滅ぼされた原因の考察かな。この章でタイトルにある「銃・病原菌・鉄」の文明における重要性について語られているけど、結論が3つに絞られていてわかりやすいし、説得力があった。
あと「文字が存在すること」も文明発展の重要な要因だったんだなぁと。「毒のないアーモンドのつくり方」の章も印象に残った。何気なく食べている食品も、数千年の歴史を得て今の形になっていると思うと、感慨深いものがある。狩猟民族の生活の部分を読んで、古代の人類の狩りの様子を妄想するのもなかなか楽しい。
ただ、読みやすいとは言え、解説の内容によっては眠たくなることもあるし(笑)、本も分厚いので読み切るのは大変だと思う。情報量も多いので、頭の中を整理しながら読む必要もあるけど、人類史に興味がある人なら楽しめる本だと思う。下巻も少しずつ読み進めて行きたい。