満足度: 9点/10点満点 ★★★★★★★★★☆
概要/あらすじ
写真家の一ノ瀬泰造さんが、1973年にクメールルージュ支配下の単身アンコールワットへ潜入し、消息を絶つまでの書簡などをまとめた本。本のタイトルは、「旨く撮れたら、東京まで持って行きます。もし、うまく地雷を踏んだら“サヨウナラ”!」と友人宛に残した手紙がもとになっている。
感想
今年カンボジアに旅行に行ったんだけど、私がカンボジアに興味を持ったきっかけとなった本でもある。この本を読んで、一ノ瀬さんがそこまでして行きたかったアンコールワットは一体どんなところなのか、自分の目で確かめたくなった。
今はすっかり観光地化していて戦時中の面影はあまり残っていないが、間近でアンコールワットを見た時は本当に感動したし、本で読んだ場所に自分が立っているのは感慨深いものがあった。
基本的に手紙の内容をそのまま載せているため、完全なノンフィクション。
戦闘に巻き込まれた日の書簡は非常に緊迫感があるし、逆に現地の人たちとの交流はほのぼのとして微笑ましく、読んでいて退屈しない。母親とのやり取りは共感できる部分がたくさんあり、日本から遠い地での出来事なのに、不思議と身近に感じる。
ただ、色々な人に宛てた手紙をまとめていることもあり、同じ内容が何回か出てくるのが少し気になった。なるべく一ノ瀬さんが残した情報を多く入れ込みたいという意図からそうなっていると思うけど、一冊の本として見ると少し冗長な気もした。
それでも、戦場の緊迫感やカメラマンの強い思いを感じることができる素晴らしい本だと思う。カンボジア(特にアンコールワット)に行ったことがある人、これから行く予定の人にはぜひ読んで欲しい。きっとアンコールワットに対する思いが強くなると思う。