満足度: 8点/10点満点 ★★★★★★★★☆☆
(※結末についてネタバレはありませんが作中のいくつかの場面について触れてます)
概要/あらすじ
ひょんなことから、砂丘の砂穴の底に埋もれて行く一軒家に閉じ込められた男。一軒家には女が住んでいた。奇妙な共同生活を送りながら、村の人間たちに労働を強いられる毎日。男はあらゆる手段で脱出をはかるが、やがて……。
感想
一見すると奇妙なストーリーに見えるけど、砂丘の穴に落ちるまでの過程も、落ちてからの主人公の心理描写によって、非常にリアリティと緊迫感がある展開になっている。読む前のイメージでは、いかにも文学的でお堅い内容の小説かと思っていたけど、先が気になり終始ドキドキする展開で、文学に疎い私でも楽しく読むことができた。
穴からの脱出を試みた果ての結末も、なかなか衝撃的だった。含まれているものが多すぎて、私の乏しい語彙力ではうまく表現できないのが悔しいが(笑)、「罰がなければ、逃げるたのしみもない」という冒頭の言葉に集約されているのかなと。文庫本で250ページくらいの長さなので、サクッと読めてしまうのもいい。
1962年の小説なので、さすがに少し表現が古臭いと感じる場合もあるけど、それも味があると思えば良いかな。自分の周りの状況に慣れ始めた時に読むと、ハッとする気付きがある本だと思う。