評価: 8点/10点満点 ★★★★★★★★☆☆
概要/あらすじ
明治31年に起きた実話を、記録的に書いた本。大嵐によって帆船・龍睡丸は太平洋上で座礁してしまう。脱出した16人は、命からがら珊瑚礁の小島にたどり着く。飲み水や火の確保、隣島への冒険やあざらしとの交流など、 厳しい状況の中でも明るさを忘れず、ただ助けを待つ。果たした彼らは再び日本の土を踏めるのだろうか?
レビュー
迫力ある描写と海の豆知識
龍睡丸が難破する描写は、非常に迫力があって手に汗握る文章で、序盤から一気に物語に引き込まれる。ストーリーもさることながら、海の豆知識も知ることができて面白い。例えば、海の上で真水(清水)を得る方法として
海がめは、腹のなかに、一リットルから二リットルぐらいの、清水を持っているのだ。
とか、波立つ海を沈める方法として
そこでまず、この大波をしずめるために、油を流すことにした。大しけのときなど、よく船から油を流す。
という内容が紹介されている。昔から伝わっている「海を生き抜く知恵」に感心しっぱなしだった。
孤島でのサバイバル術がいちいち面白い
無人島での工夫の数々も面白い。ウニのトゲを干して白くし、チョークの代わりに使ったり、食用の海ガメ牧場を造ったり、こちらもいちいち感心する。普通だったら絶望して発狂する船員も出そうなものだが、16人全員がお互いを支えあい、もくもくと役割を果たす姿には強い精神力を感じたし、今の日本人も見習わなくてはならないなぁと思う。
事実は小説よりも奇なり
もともとかなり古い本のようで、句点が多くて少し文章が読みづらい気もしたが、描写に臨場感があって16人と一緒に喜んだり悲しんだりできたし、実話がモデルとは思えないような先が気になる展開の連続で面白かった。まさに事実は小説よりも奇なりということを感じさせてくれる本だった。