評価: 9点/10点満点 ★★★★★★★★★☆
あらすじ
クリント・イーストウッド監督・主演作。従軍経験を持つ元自動車工のウォルト・コワルスキーは偏屈な老人で、子供たちの関係も最悪。妻に先立たれ、愛車であるフォードの「グラン・トリノ」と愛犬と共に、孤独に暮らしていた。彼の隣家には、モン族の一家が暮らしている。最初は彼らを忌み嫌っていたウォルトだが、モン族の娘スーや、内向的な少年タオとの交流を通じて、徐々に心を開いていく。しかし、タオを仲間に引き入れようとする不良グループの嫌がらせがエスカレートし、やがて衝撃的な事件が起こる。
レビュー
※結末についてハッキリとしたネタバレはありませんが、映画の展開やシーンについて触れています
笑っちゃうくらいの頑固ジジイっぷり
とにかく印象的なのが、クリント・イーストウッドの頑固ジジイっぷり。口を開けば文句・悪口・人種差別。しかし不思議と嫌悪感は無く、思わず笑ってしまうようなユーモアに溢れている。個人的に、散髪屋との親父とのやり取りが最高だった。とても子供に見せられないような悪口の応酬だが、その裏に感じる仲の良さが微笑ましくて、何度も繰り返し見たくなるシーンだった。
ウォルトのカッコ良さや人間臭さも魅力
朝鮮戦争の従軍経験があるだけあって、ウォルトのチンピラに対する凛とした態度はとてもかっこいい。指で銃の形をつくって撃つマネするシーンとか最高である。一方で、牧師に自分の長年の懺悔を打ち明けるシーンや、朝鮮戦争でのトラウマを語るシーンは人間臭さを感じて、じ~んと胸に来るものがある。まさに、笑いあり涙ありという言葉がぴったりな映画かなと。
ただ、不良達が一線を越えた時のシーンは少しエグくて、ちょっと嫌悪感を抱く人もいるかも。
終わりは寂しいけど、爽やか
個人的には、結末は少し悲しすぎた。でも、その後のシーンもユーモアに満ちており、ウォルトらしさを最後まで貫いた内容になっているので、哀愁溢れるエンドロールの歌と共に、爽やかな気持ちがこみあげてくる。ド派手なアクションシーンなどは無いが、しっかりとした脚本に裏打ちされた、いぶし銀のヒューマンドラマだった。