満足度: 7点/10点満点 ★★★★★★★☆☆☆
(※結末についてハッキリとしたネタバレはありませんが、映画内のいくつかのシーンについて触れてます)
あらすじ
芥川賞作家・中村文則の同名デビュー作を映画化した作品。平凡な大学生の西川トオルは、豪雨の河原で一丁の拳銃を拾う。その日からトオルの心は高揚感を覚え、スリルと緊張が彼を支配していく。銃を大切に家で保存していたトオルだが、銃を磨く毎日に物足りなさを感じてくる。そして彼はついに銃を手に取り、街をさまようのだが……。
感想
東京国際映画祭にて鑑賞した映画。特徴的なのは白黒で撮影した映像。個人的に白黒の映画ってそこまで好きでは無いんだけど、この映画に関しては、銃を手に入れた主人公の非日常感を表しているようで良い演出だと思った。不安定で危険な主人公・トオルを演じた村上虹郎の演技は観ていてハラハラしたし、自己中心的な言い回しや態度もハマっていた。どこかで見たような顔だなぁと思ったら、歌手のUAさんの息子さんなんだね。
広瀬アリス演じるヨシカワユウコは、ちょっと面倒臭いけど真っすぐな女性で、暗いムードの映画に花を持たせている。映画祭の舞台挨拶でも、ユウコが唯一の良心になっていると監督が言っていたが、まさにその通りだと思う。ただ、後半ユウコとトオルが大学ですれちがって話すシーンは、少し説明的すぎるというか、台本を読み上げてる感が強くてイマイチだった。話している内容はとても良かったけど、もう少し自然に伝える演出ができたらもっと良かった気もする。
ラストシーンはなかなか衝撃的で、ちょっとしたことで人間の狂気が解き放たれてしまう怖さを感じる。カラーに戻るシーンはとても印象的で頭に焼き付いたし、一気に非日常から日常に戻される感覚が味わえたのも面白かった。前半から中盤にかけて、ややテンポの悪さも感じたが、チャレンジングな演出が光ったし、トオルと刑事の駆け引きのシーンはとてもドキドキした。小説をなぞっただけではなく、ひとつの映画として成立しているし、エンターテインメント性もバッチリある映画。ピリッとした邦画が見たい人にオススメ。