満足度: 9点/10点満点 ★★★★★★★★★☆
レビュー
※結末についてハッキリとしたネタバレはありませんが、映画の展開やシーンについて触れています
日本の有名登山小説(漫画)がフランスでアニメ映画化
登山家マロリーはエベレスト初登頂を成し遂げたのか?カメラマンの深町誠は、天才クライマーとして名を馳せた羽生丈二が、マロリーの遺品と思われるカメラを手に去っていく姿をネパールで目撃する。
深町は羽生の軌跡を調べてをマロリーの謎を突き止めようとするが、二人の運命は交差し、彼らをエベレストにいざなう…というお話。
夢枕獏の小説が原作で、漫画化もされた有名作品がフランスでアニメ映画化されたもの。私は登山をモチーフにした作品は好きなので鑑賞。
エベレストを巡る謎に引き込まれる
ストーリーは淡々と進んでいくが、山に取り憑かれた男達の狂気や葛藤などが丁寧に描かれているため、登山に詳しくない私でもしっかり感情移入ができる。
1924年にマロニーはエベレスト登頂を果たしたのか?羽生のエベレスト登山の行く末は?など、先が気になる内容で、食い入って観ていたら90分があっという間に過ぎた。
前半は日本でのシーンが中心になるが、フランスでつくられた映画ながらしっかりと1980〜1990年代の日本を描いており、違和感はなかった。このあたりは原作へのリスペクトや作品への愛を感じた。
狂気とも呼べる登山家の生き様。登山好き以外にも
静けさの中にどこか狂気を感じる雰囲気は個人的にかなりツボだった。高山病や幻覚など、山の極限状態の描写も鬼気迫るものがあり「なぜ山に登るのか?」というテーマや、登山家の生き様を強烈に印象付けている。
私はもともと登山のドキュメンタリーや映画を観るのが好きなのだが、この作品はこれまで観た登山をモチーフにした作品の中でも最も印象に残ったかもしれない。
90分という映画の時間のせいか少し駆け足に感じた部分もあるが、マロニーの謎を追うストーリーはミステリーテイストで面白いので、登山にそこまで興味が無い人でも骨太のアニメ映画として楽しめるのではないかと思う。