満足度: 8点/10点満点 ★★★★★★★★☆☆
レビュー
※結末についてハッキリとしたネタバレはありませんが、映画の展開やシーンについて触れています
北アイルランドの宗教を巡る争乱に巻き込まれる少年と家族
北アイルランドの街・ベルファストで育った9歳の少年バディは、住民全てが顔なじみで仲良く暮らしているこの街で充実した日々を送っていた。しかし、1969年、一部の過激派プロテスタントがカトリック住民への攻撃をはじめ、バディとその家族は大きな決断を迫られることになる…という実際に起こった事件をもとにしたストーリー。
今回は映画館で鑑賞したのだが、観る前は全編白黒映像だと思ってたので、映画冒頭で陽気な音楽とカラー映像が流れたときに「あれ!?部屋間違えた!?」と一瞬焦った笑
あまり詳しくは書かないが、映画の一部にカラー映像を挟んであり、カラーを挟んだ意図を色々と考えるのが楽しかった。
お堅くてシリアスな映画かと思いきや…
宗教をめぐる争いを描いた映画だし、かなりシリアスな映画かと思っていたので身構えて観ていたのだが、意外なことにコミカルな描写が多い。バディの無邪気な行動や、飄々としたバディの祖父の笑えるセリフなどが散りばめられており、思わずクスッと笑ってしまう。
もちろんストーリー自体はシリアスで、激しい襲撃のシーンもあるし、バディや家族の心情を考えてグッとくるシーンもあるので、観ていると色々な感情が湧いてくる。映画の空気感や故郷というテーマから、どことなくニューシネマパラダイスのような雰囲気も感じた。
危機的な状況でも希望は持てる
過激派プロテスタントのカトリック住民への攻撃は激しくなり、映画も終盤に向かって重たい雰囲気が増してくる。ラストについては詳しくは書かないが、世界中のあちこちで分断が起こっているこのご時世にグサッとささるようなセリフもあったし、個人的には希望を持てる終わり方に思えた。
故郷を去るもの、残るもの、それぞれの生き方を後押しする優しさや、厳しい状況の中でも明るさを捨てないベルファストの人々の強さにも勇気づけられる。
私はヒューマンドラマ的な映画はそこまで好きというわけではないのだが、時間も100分程度なのでサクッと観れたし、シリアスながら適度に息抜きができる内容なので、いろいろなことを考えながらも楽しく観ることができた。個人的には、作中のベルファストの街の風景を白黒ではなくカラーで観たかった気もするのだが、まぁこれは好みの問題かなと思う。
アカデミー脚本賞受賞も納得の作品だった。