満足度: 9点/10点満点 ★★★★★★★★★☆
あらすじ
人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカを舞台に、黒人ピアニストのドクターと、イタリア系白人運転手のトニーが旅を続けるなかで友情を深めていく姿を、実話をもとに描いたヒューマンドラマ。第91回アカデミー作品賞を含む3部門を受賞している。
全く異なる2人の珍道中は微笑ましくてクスッと笑える
粗野で世俗的なイタリア系白人のトニーと、インテリの黒人ピアニストのドクターのコンビの掛け合いがとても面白い。最初はぎこちなかった二人が、一緒にフライドチキンを食べたり、トニーが妻に宛てた手紙をドクターが添削するシーンは微笑ましいし、ユーモアたっぷりに描かれているので笑える。
レビュー
※結末についてハッキリとしたネタバレはありませんが、映画の展開やシーンについて触れています
ドクターとトニーのキャラが魅力的で際立つ
ドクターはインテリなんだけど嫌みがなく、粗野なトニーのことも馬鹿にせず、しっかり向き合っているから不快感がない。だからこそ不条理な黒人差別を受けたときに心動かされるものがある。トニーはトニーでキャラが良くて、教養は無いけど頭の回転は早く、色々なピンチで機転を効かせて切り抜けていく様が、見ていて心地いい。性格がとても素直だからこそ、たまに的を射たことを言ってハッとさせられるシーンが多々あるのも印象的だった。
つくり込まれた世界観と、シリアスとユーモアの絶妙なバランス
南部で過酷な肉体労働をしている黒人たちが、白人をドライバーにしてきれいな服を着たドクターを見つめるシーンは、コントラストが効いていて印象的だった。ドクターの持つ、他の黒人に対する疎外感を表現しているようにも思えた。
内容的には人種差別が絡むシリアスな映画でもあるけど、合間に挟まれるコミカルなシーンが良い箸休めになって、気楽に見ることができる。ただ、事実をベースにしているらしいが、事実ありきで観ると、かなり話は盛ってるように感じるのは事実。事実云々よりも、人種差別を題材にしたヒューマンドラマを描いた映画だと考えた方が良いかも。
全ての差別を取っ払え!という気概を感じる名作
全体的に音楽もすごく良くて、特に終盤の酒場でピアノを演奏するシーンは、ドクターの心の解放みたいなものが感じられてグッと来るものがあった。ストーリーもメッセージ性が強くて感動的だし、人種差別だけではなく、貧富の差や教養の差も全部とっぱらえ!というような気概も感じる名作ヒューマンドラマだった。