満足度: 9点/10点満点 ★★★★★★★★★☆
あらすじ
ゴミ収集の仕事をしている聴覚障がい者の茂。ある日、仕事中に粗大ゴミとして置いてあったサーフボードを拾った茂は、サーフィンを始める。同じく聴覚障がい者の恋人・貴子に見守られながら、腕を上げていく。大会にも出場し、ますますサーフィンにのめり込んでいく茂。しかし、いつものように貴子が海辺に行くと、そこには……。
レビュー
※結末についてハッキリとしたネタバレはありませんが、映画の展開やシーンについて触れています
これはある意味サイレント映画
これはサイレント映画だ、ってどこかの映画評で読んだ。たしかに映画をみたらその通り。主人子のセリフが無いっていうのはキャラクターの感情の変化とか主張を表すのがすごく難しいと思う。
でも逆に表面的なセリフや陳腐なセリフが無い分、表現が軽薄にならない面もあるなと感じた。もちろんそれは、役者の演技や演出でうまくそれを表現できているからだと思うけど。
さりげない演技がストーリーをつむぎ出す
茂が脱いだズボンを貴子がたたんでサーフィンを見守ってくれているのが印象的だった。セリフが無くても、こういうさりげない演技が積み重なって、ストーリーがつむぎ出されているように感じる。真木蔵人さんにもこういう時代があったんだなぁとしみじみした。
役としては素朴でピュアな印象なんだけど、貴子にボード買いに行かせたり、家の窓に石投げて割ったりと、結構ひどい男だったりする。そのぶん、貴子の健気さが際立っている。サーフィンって全然興味ないんだけど、試合中にサーファーがやすやすと波に乗るシーンはカッコイイ。
ラストは悲しいが……
ラストは作品の雰囲気には合ってるが、個人的には少し悲しすぎた。虚無感に襲われるというか。まぁこれは完全に好みの問題だから、好きな人は好きだと思う。
久石譲の音楽はノスタルジックでどこか物哀しい感じがして好きなんだけど、この映画には特にマッチしているなぁと感じた。最近のエンタメ志向の北野作品も好きだけど、やっぱり昔の作品も面白い。